Live Cafe Rooster

地階から胃薬

皆様、「地階から胃薬」をクリックしていただきありがとうございます。
このコーナーはルースター総支配人による不定期更新のコラムです。
ルースターの事、総支配人の事、出演者の事、お客様の事をはじめ、ルースターにまつわるいろんな事柄をご紹介しております。
お茶でも飲みながらゆっくりとご覧くださいませ。

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さらば青春の光。

2006年6月9日(金)

昨夜はPAをスタッフに任せ、都内にあるロックなライブハウスに出かけた。
店を抜け出してまで行くにはわけがあった。
昨夜、20年以上前にはまっていたあるバンドが突然復活したからだ。
ロック系のライブハウスに行くなんて久しぶりだ。
ここには当時熱く盛り上がっていたかつての若者たちが集まっている。
みんな嬉しそうだ。
しかし、定刻をすぎても始まらないではないか!
残念だけれどもロック系ライブハウスではお客さんのことを気遣う空気をあまり感じたことが無い。
詰め込むだけ詰め込んで立たせたまま30分も待つのだ。いや、正確には開演時間から30分過ぎているので、1時間立ったまま動けないお客さんが多数いる。
ロック系ライブハウスではそれが普通なのかは追求はしないが、それを「お客さん待ってるからそろそろ始めてもらえませんか?」とライブハウスのスタッフは誰も言わないのか!
こうしたミュージシャンの方がライブハウスよりもそしてお客さんよりも偉いのだという空気はロック系ライブハウスのオーナーたちは長年、誰も改善しようとしなかった。
なぜなのだろう?
音も必要以上に大きくて何やってるのかわからない。まあ、ほとんどのお客さんはレコードを擦り切れるくらい聴いていた方々だろうからイントロだけで最後まで正確に理解できるのだろうが…。

私は言いたい。お客さんあってのライブハウスではないか!
スーパーのワゴンセールに群がるおばちゃんたちですらもっとお客さん的な扱いを受けているはずじゃなかろうか…。
ロック系のライブハウスに来るお客さんなんてそれ以下なのだろうか。
まあ、それはともかく、昨夜ひとつの私の青春が終わった。
かっこいい、いかしてる、これが本物のロックだぜ、そんな風に思っていた、信じていた日々があったことは確かだ。

しかしながら、確信したことがあったのだ。
ルースターは間違っていないぞ、そしてもっと素敵なお店にしてお客さんに楽しんでいただけるようにしていくんだ、と。 

天国と地獄。

2006年6月10日(土)

なんとあろうことか昨夜もお店を留守にしてしまったのである。
昨夜はどこに行ったのかというと、東京駅から徒歩1分のところにできたコットンクラブに出掛けたのである。
出演はスーパーハーピスト、ジェームス・コットンのバンドだ。
コットンクラブの案内に通向けのプログラムと紹介されていたのはちょっと笑ってしまう。
なぜなら、我々ブルース好きに言わせて見ればジェームス・コットンは通向けなどではなく、大メジャーなブルースマンだからだ。
まあ、ブルース好きでなければ一生聴かないかもしれないわけでその意味ではそのコメントも納得ではある。
一昨日の某ロック系ライブハウスに懲りた私は、昨夜のコットンクラブではまさに天国気分を味わった。
シックな絨毯を歩いて案内されたのはステージを右側手前から眺めるという一段高い席。
ロックライブハウスでは紙コップで味気ないコーラだったが、コットンクラブではフォアグラなディナー。
ウエイトレスも絶妙な気配りをしてくれ、普段呑まないのにライブの楽しさもあいまって3杯も飲んでしまった。
なにせコットンは巨漢。前にシカゴで見たときは座ったままだったが、昨夜はのりのりでダンスまで披露。
おまけにギターはシカゴ在住日本人ギタリスト、菊田俊介氏その人だ。
ライブ前には客席で知り合いを見つけては挨拶などしており、私のところにもやってきて挨拶してくれた。
客席にはよく知る方々のほか、ルースターにもお越しいただいているお客さんの顔もちらほら。
さすが、ジェームス・コットン&菊田俊介。通(笑)が集結している。
しかし、まじでブルースはいい。心から楽しめる。
店内はゴージャス、音量も程よく、スタッフも素晴らしい。
あえて、難を言えば、高いということくらいだろうか…。
さあ、思いっきり元気をもらった私は昨夜も心に誓ったのだ。
ルースターも大人が楽しめるお店にどんどんしていくのだと。
しかも料金は庶民的に抑えながらね!

荻窪グッドマンは高円寺へ。

2006年6月25日(日)

一昨日、23時を少し回った頃、荻窪の老舗、グッドマンへ行って来た。
長年営業してきた現在の建物が取り壊されるらしく、7月より高円寺に移転するのだそうだ。
それにより、現在使用しているグランドピアノを手放すという情報を得た私はさっそくライブが終わった頃を見計らって電話してみたのだ。

「すぐ見に来られますか?」
「では10分で参ります」。

グッドマンは商業主義に流されない営業方針で30数年この荻窪でやってこられたお店だ。
出演者もグッドマンを愛して、長年出演しておられる方々が多く、この夜、出演のピアノの渋谷さんと歌のさがゆきさんもその中のおひとり。

ピアノは大変いい味を出しているレトロな逸品であったが、残念ながら断念することにした。

その時である。渋谷さんが「このピアノはこつが必要でね。弾く見本をお見せしましょう」と3曲ほど披露してくれた。

グッドマンは閉店ではなく、移転であるとはいえ、このお店に染み込んだ思い出の数々が渋谷さんのピアノでゆっくりとにじみ出てダンスを舞った。
それはこのお店が取り壊されるのを悲しんでいるのではなく、「今までありがとう」と感謝しているかのようだ。
移転先の高円寺には千野さんという(なんと私の親父の教え子)方がピアノを贈呈してくれているらしい。
この渋谷さんが弾くピアノももらいてがなければ一緒に取り壊されてしまうのかもしれない…。
グランドピアノは静かに感謝の言葉の音を出していた。
それを弾くのははじめからグッドマンに出演していた渋谷さんであったのだからなおさらだろう。

時間というのは不思議である。
誰しも同じ24時間であるが、この荻窪グッドマンには1970年代のそれが流れていた。

サッカーは終われども。

2006年6月25日(日)

サッカーも一段落。近所のお店などもすっかり応援セールを辞めてしまいました。
「ルースターでも中継すればよかったのに」との声もありそうなものですが、実は8年前に日本の試合を流したところ、負けてしまいました。
お店にお越しになられていた日本人の皆様はがっかりし、外国人のみなさんは大喜びするという非常にまずい空気に包まれた経験から以来、テレビも撤収(最初はあったのです)したのでありました。
喜ぶ方と悲しむ方が一緒にいるなんてルースターではできませんです。
喜ぶ方だけがよいのであります。
それはともかくといたしまして、サッカーがあろうがなかろうがルースターは生演奏をやっております。
サッカーは日本が出ないと一気に街の空気も変わってしまいますが、せめて生演奏はごひいきなバンド以外もぜひご体験いただいてみてはいかがでございましょう?
真のサッカーファンにとってワールドカップは終わっていないのと一緒です。
生演奏大好きな皆様のお越しをお待ちしております。

レイニーズバンドのCDを聴いて…。

2006年6月29日(木)

モータウンの歌手は非常に有名である。しかし、録音したミュージシャンは案外知られてはいない。
映画「モータウン」はそんなミュージシャンに光を当てたものだった。
いわゆるモータウンサウンドは歌手が誰であろうとデトロイトのミュージシャン、ファンクブラザースによって録音されていたのである。

日本ではどうだろう…。

やはり、歌手がメインでミュージシャンに興味を持つリスナーは少ないのではないだろうか。

70年代のR&Bの香りがプンプンするレイニーズバンドもそんな日本を代表するミュージシャンの集まりであるが、やはり一般的にはあまり知られてはいない。

メンバーは
カズ南沢(vo.g) レイニーズ加藤(b) Bob斉藤(sax)を中心に エルトン永田(key) 三松亜美(cho) 杉本和世(cho)が不動のメンバー。
これに加え、西山はんこ屋史翁(g) 松下誠(g) 庄司厚人(g) ジュニア豊田(d) 松本照夫(d) 島村英二(d) 正木五郎(d) 嶋田吉隆(d) 山田智之(perc) 竹本一匹(perc) マック清水(perc) 醍醐弘美(key)など分厚いメンバー構成になっている。

さらに今回のCDにはキングオブスタジオミュージシャン今剛(g) KOTEZ(Hrm) 染谷ゆきの(cho) 鎌田清(d) こかずさんこと石坂和弘(g)も参加している。

これらのミュージシャンは○○バンドのメンバーだったとか、誰々の録音をしているとか、そういう肩書きを書き出せばきりが無い、知る人ぞ知るミュージシャンたちだ。

レイニーズバンドはこれまでライブ盤は出しているが、スタジオ録音のCDはこの「patience and forgiveness」が最初。

いざCDをかけてみると(針を下ろすという言葉を使いたい気分だが)これが凄かった。

これまでライブのほうがいいというバンドは多く体験していたが、レイニーズバンドにおいてはどちらも最高であった。
スタジオ録音を待ち望んでいた方も少なくはなかったはずだ。
現にライナーノーツを書いている大友博氏もこのバンドを知らなかったひとり。
その氏もだまされたと思って見て欲しいといわれライブを体験し、この録音を喜んでおられる。
氏は書いている「大人の音楽とはありふれた言葉で使いたくは無いが、まさにしぶい彼らゆえに出せる音」だと…。
CDの包装のビニールにはユーミンの言葉もある(そういえば、今剛はユーミンのLPで録音もしていた)。

このCD、タワーレコードなどに行けば売っているのでぜひ買ってみて欲しい。そこには「まさに世界中の音楽好きに聴いてもらいたい音」が入っている。

ルースターでは8月19日に出演がある(もちろん、ルースターではそのほかの日も毎晩様々なミュージシャンが熱演を繰り広げております)。

録音といえば、ゼブラブラザースと五十嵐はるみの合体バンド、ブルースエンジェルスも日本で行われるNBAの記念DVDとワールドカップサッカーのDVDに収録する曲を録音したそうだ。

「大人の音楽」という言葉は本当におかしいと思う。普通に考えれば子供向け音楽という言い方がピックアップされるべきで、大人向け音楽はごく自然であるべきなのだ。
そういう意味で聴いて欲しいミュージシャンたちがいっぱいいる。しかし、ライナーノーツを書いた氏のように、たまたま出会わなければ知らずに一生過ごしてしまうのだ。

毎晩そうしたミュージシャンの熱演を聴ける私は実に幸せものだ。もちろん、そんな私でさえまだまだ知らないミュージシャンが大勢いる。

一生をかけても全員は聴き尽くせはしないかもしれない。それゆえにずっとずっとこの仕事をしていきたい。
そして「こんなミュージシャンたちがいますよ」とより多くのミュージシャンをお客様にご紹介できるようになりたいのだ。

目標は全国ルースターグループ。やったるぜ。